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『アンドロメダな朝』美少女とご主人様の愛の物語・毎日過激に更新中 

【絶対R18】愛故に奴隷になった美少女と愛する者を責め苛まずにはいられない男の愛の行方は。

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☆ その35=闇を照らす灯り。

「あんっ。」
 痛みとは確かに違う電気が咲織の躯を貫いた。 平らな下腹が波を打った。

「見ろ。」
 三宅は咲織の秘唇を掻き別け、その陰に怯える花びらを玩んだ指を咲織の前に突き付けた。 その指は明らかに婬蜜に塗れてぬベ光っていた。 咲織は思わず顔を背けた。

「嘗めなさい。 おまえの垂らした婬蜜だ。 おまえがその口で清めるのが当然だろう。」
 三宅は乱暴に咲織の頬を片手で掴み、引き結んだ桃色の唇の間に濡れた指を突っ込んだ。 
拒む暇も与えられず、鼻を摘ままれた。 仕方なく開いた口の中を三宅の指は蹂躙した。 まるで雑巾で拭う様に。 

『嫌。 自分の婬蜜なんて。 穢らわしい。 そんなもの、嘗めたくない。 認めたくない。 縛られて、辱しめられて、全てを好きな人に見られて、それて濡れる? そんな。』

「それがマゾの味だ。 マゾの証拠だ。 縛られて、自由を奪われて、その上隠す術無く、秘唇の奥まで見られては、普通の女なら恥ずかしくて、あるいはそんな事をする男への怒りに秘唇は干からびる。 触れれば濡れると言う機械的な反応を女はしない。 幾ら好きでも、意にそぐわない事を無理にされれば女は干からびる。 そうする事で、愛する事の出来ない子を宿さない様に出来ている。 それでも無理やりすれば女の大切な部分は傷ついてしまう。 嫌がる女性に無理やりしておいて、濡れていたと言う男は馬鹿だ。 サディストはそんな事はしない。 いや、そんな女が真に嫌がっている状況では興醒めしてしまう。 サディストは強姦魔とは違う。 もっとエレガントな存在だ。 サディストが昂るのはおまえの様な羞恥に慄きながら、痛みにのたうちながらも躯の芯を婬らに燃やすマゾに出会った時だけだ。 そして、初めて縛られ、初めて裸を晒し、これから初めて辛い罰を受けると言うのに躯の芯に婬美な炎を燃やし、秘唇をそぼ濡らすおまえは稀有な程に真正のマゾ雌だ。 その事を胸に刻め。 おまえは普通の女では無く、稀有な変態なのだと。 存在だけで恥ずかしい雌犬なのだと。」
 三宅の言葉は熱を帯びていた。 その熱が咲織の肌を燃やすのか、咲織は冷房の効いた部屋の中で汗すらその白い肌に載せていた。 それでも、咲織の胸は三宅の言葉に反抗し、哀しみとも怒りとも名前の無い感情に喘いだ。 わだかまりが爪を立て掻き乱したい程の流れとなって胸に溢れ、それが咲織の頬を涙となって洗った。 
 
『違う。 違います。 あのふしだらな、婬らな母とは私は違う。 咲織はご主人様が好きなんです。 好きだから、辛いのに、躯が騒ぐんです。 苦しいんです。 どうか、どうか判ってください。 どうか。 咲織を単なる変態とは言わないで。』

 感情の奔流に流されながらも、咲織は何処を探しても三宅を嫌う気持ちの無い事に気付いていた。 そして、その事が暗闇を照らす灯りの様に思え、縋った。
 
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☆ その36=爪先まで。

「ふふん。 違うと言いたげな貌をしている。 認めたくは無いだろう。 変態が変態を見つけ、惹かれたのだとは思いたくも無いだろう。 ましてそれが、おまえの言う様に初恋なら。 綺麗なものに思いたいだろうな。 それもいいだろう。 どうおまえが思おうが本質は変わりはしない。 おまえはただ好きだと言う俺の奴麗として、俺の命令に何時でもただ殉じればいい。」
 三宅は判ったかと言う様に細い咲織の顎を持ち上げ、その瞳に言い聞かせた。 その強い眼差しには何処か哀しみが宿っている気がした。 咲織は胸を掻き毟るわだかまりが遠ざかっていくのを覚えた。 躯から強張りが消え、縄に馴染んでいく。 肌が縄に擦り寄っていた。 それがまるで三宅の力強い腕だとでも言う様に。  
 
「さあ、罰を呉れて遣る。 どうかご主人様の言いつけに従わず醜い陰毛を生やしてきた私をお好きなだけ罰してください、と俺にお願いしろ。 この口で。」
 三宅は咲織の顎を掴んで揺さぶった。 躯が揺れ、小さな爪先が床の上で踊った。 

『そんな事を。 そんな事を自ら願えと? それが奴麗なのですか。 それが私、咲織なのですか。 それが出来なかったら・・・?』

 胸が痛んだ。 ひりひりと肺腑が焼かれる。 咲織は三宅の命令に従いたかった。 だが、開き掛けた唇からは声が出なかった。 何かが、咲織の中の何かが、小骨の様に喉に引っかかっていた。

「いつでも、俺に何かされる時は、自ら進んで俺に願い出ること。 それが、縛めでも、鞭でも、どんなにおまえに過酷な苦痛と屈辱をもたらすことでも。 俺を悦ばせるために肉躯も魂も自ら進んで差し出す。 それが奴麗の務め、ご主人様に対する基本姿勢だ。 判ったら、さあ、言いなさい。」
 
『自ら進んで、ご主人様を悦ばせる。 普通の恋人でも、相手を悦ばせるためなら自ら進んでするんだもの。 ご主人様が仰っていることに間違い無い気がする。 でも、違うのは、ご主人様が悦ばれるのは、私にこんな苦痛と辱めをお与えになること。 あぁ。 そうしなければ、ご主人様は咲織への興味を無くされると。 咲織はまた一人。 この世界へ一人で放り出される。 この熱い思いのやり場も無く。 その事の方が咲織には怖い。 辛いです。』

「ど、どうか、お好きなだけ、私を罰して下さい。」
 切れ切れに咲織は、血を吐くようにつぶやいた。
「聞こえない。 もう一度。 もっと大きな声で。」
 三宅が強い口調で脅す。
「どうか、お好きなだけ、私を罰して下さい。」
「いいだろう。 おまえが反省して、どんな言いつけにも真摯に従う奴麗に成れる様に打ってやろう。 痛みをその躯に刻んでやろう。」 
 
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☆ その37=初めての痛み。

 咲織は、精一杯爪先立ちしても左足の親指だけが辛うじて床に触れるだけだった。 少しでもバランスを崩すと敏感な乳房の上下の縄だけで躯重を支える事になり、千切れる様な重い痛みに呻く事すら出来ない。 その苦痛にか、白い肌は酒を含んだ様に朱を帯びて艶めいた。

「もっと、もっと苦痛に喘げ。 苦痛に喘げは喘ぐほど、おまえは俺を心地好く刺激する。その痛みも、その恥ずかしさも、全て俺が与えたのだ。 奴麗のおまえは全身でそれを受け止め、苦痛と屈辱に身を任せろ。 何も考えるな。 ただ、俺の与えた苦痛と辱めを味わいなさい。 おまえは俺の奴麗だ。」
 三宅は、手にした九尾鞭をヒュッと空中で鳴らした。 それは本能が怯える音だった。 まだ知らぬ痛みを感じ、咲織は慄いた。 堪えよう、受け入れようとしても奥底から恐怖と不安の湧いてくるのを止める事が出来なかった。

 もう一度、空気が裂ける鋭い音が聞こえた。 殆ど同時に肉を打つ湿った高い音と共に、打たれた尻から灼けるような痛みが織の躯を駆け抜ける。
 
「あっうぅぅぅ。」
 堪えようとしたが、細い悲鳴が漏れた。 痛みに身を捩らすと、脚が床を離れ、乳房に縄が食い込み、新たな苦しみが加わる。 爪先は少しでも安定を求めて足掻く。 やっとの思いで床を爪先が捉え、安堵の溜息を漏らす。 叩かれた尻からじんと痺れる痛みが染み込んでくる。 息が乱れ、胸が大きく上下した。 それがサディストを更に駆り立てるとも知らずに。

「痛いか」
「はい。」
 ようやく息を整えると小さく答えた。 

「痛いだろう。 当然だ。 この鞭はマゾへの褒美では無い。 おまえが俺の言うことを聞かなかった罰の鞭だ。 次はもっと痛いぞ。 耐えなさい。 そして、いつかその痛みを悦ぶようになりなさい。 マゾの本能を解放して。 まだおまえはその資質を自分に隠している。 徐々にでいい、解放した時本当の俺の奴麗となる。 覚えておけ。」
 三宅の言葉に咲織は無意識の裡に頭を振った。

「ひゃぁぁぁぁぁ。」
 再び鞭が唸り、咲織は悲鳴を上げた。 縄の中で細い肉を捩り、足元を躍らせて華奢な背を弓反らす。 
「良い鳴き声だ。このホテルは駅の中にあるために、普通のホテルの何倍も防音が施されている。 隣に聞こえることは無い。 心配しないで、精一杯鳴き声を上げろ。 鳴いて痛みを堪えろ。 そして、味わえ。 俺がおまえに与えた痛みなのだから。 良く味わいなさい。 嬉しいか。 罰を与えられて嬉しいか。 おまえを奴麗にするための罰を。」

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☆ その38=罪なき罰。

 三宅は威嚇するように、鞭を宙に振るった。 空気が引き裂かれるのが見えた様だった。
「もう一度聞く、罰を与えられて嬉しいか。」
「はい、嬉しいです。」
 咲織がそう頷いたのは、怖さからだけでは無かった。

「いっぱい鞭打って欲しいか。」
「一杯、いっぱい、ぶって、ぶってください。」
 咲織は、惑乱したように謂った。 自分で言いながら、それが三宅の鞭の脅しに屈したのか、三宅に媚びたのか、それとも本心からか、咲織には判らなかった。

「よし。罰は20発だ。数えろ」
 三宅は、咲織の丸い尻を目掛けて鞭を振るった。
「ひっー。」
 ぱちんと鞭が咲織の尻で弾けた。 鋭い痛みが躯を駆け抜ける。 数える言葉は消し飛んでいた。 

「数え終わらないと、幾つでも打たなきゃならない。 そんなに鞭が気に入ったか。」
「い、いいえ。 数えます、数えますから。」
 咲織は慌てて言った。 痛みが全ての感情をねじ伏せていた。

「俺の鞭が気に入らないのか。」
「いいえ。好きです。」

『どうして、そんなこと言ってしまったんだろう。 好きな訳無いのに。でも、ご主人様に逆らえない。 逆らいたくない。 ご主人様に悦んで欲しい。 どうせ痛みを与えられるなら。 この身を捧げるなら。』

「では、打ってやる。 今一度、打ってくださいと言え。」
「はいっ、打ってください。」
 素直な気持ちに変わっていた。 その事が咲織に勇気を与えた。 一時、痛みの恐怖を忘れた。

「何処を打って欲しいんだ。」
「お尻を、咲織のお尻を打ってください。」

『ああ、言ってしまった。 あぁ、また打たれる。』
 咲織は、縛められた躯を捩り、捨て猫のような眼で三宅を見つめた。

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☆ その39=鞭。

 容赦無い鞭が咲織の尻を咬む。
 咲織は、痛みに身を捩り、甲高い悲鳴を上げる。 やはり数など数えられる余裕はなかった。

「また、数えなかったぞ。 そんなに打たれたいなら、壊れるまで鞭を味わいなさい。」
「あぁー。」
 咲織は望みの無い虚空に向かって、哀しい声を上げた。 

「いい声だ。 感じる声だ。 もっと、もっと鳴いて悦ばせてくれ。」 
 それが合図だったように、三宅は休むことなく咲織の双殿に鞭を叩き込んだ。

「ひぃーーー、ひっ、ひっ。」
 悲鳴を上げる余裕さえも無く、咲織の躯は鞭に舞い、躯を貫く痛みに翻弄され続けた。
痛みの津波が肺臓から全ての空気を押し流し、咲織の躯は空気を求めて咳き込んだ。 咳き込む度に縄が乳房に喰い込む。 縛められた身である事をその躯に刻めと言う様に。

 幾つもの痛みが咲織の躯の奥に同時に押し寄せる。 尻を打たれている筈なのに、全ての皮膚が裂け、肉が千切れそうだった。 胸が傷つき、頭が痺れた。 もう、怖いとさえ想えなかった。 ただ、嵐に翻弄されているだけだった。
 
 三宅が打つ手を休めた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ。」
 胸の奥に堪った痛みを押し出すように咲織は鳴いた。 打たれた尻だけでなく、躯全躯が熱く燃えていた。 白い肌は上気して赤みを帯び、涙に濡れた瞳は妖艶ささえ漂わして喘いでいた。
  
 三宅は、咲織の純白の尻に拡がった鞭跡を見詰めた。 尻全躯が紅く染まり、薄く艶のある皮膚の下に血の色を見せて痛々しくも美しい。 

思わず三宅は嘆息を漏らした。 咲織の顔を両手で包むと唇を奪った。 切れ切れの息の下から咲織が反応する。

『ご主人様。 もっと。』

 咲織の胸に湧いた三宅の想いは無残に取り残された。 咲織を打ち捨て、三宅は再び咲織を打ち始める。 

 一つ打つ度に三宅の掌に、咲織の尻肉の弾力が心地好く伝わった。 三宅の腕が痛くなり始めた頃、咲織の若く張り切った肌も限界を超え、鞭打たれる度に裂ける様な赤い蚯蚓腫れが走った。 さらに加えられ続ける鞭に赤い網目から血玉が浮ぶ。 絶え間無い悲鳴が部屋を震わせる。 鞭の音は咲織の血を吸った様に、飛び散る汗に濡れて湿った音に変わっていた。 咲織の丸く上がった双球全躯が腫れ上がっていた。 離れていても熱さを放射している。 悲鳴が息も絶え絶えの嗚咽に変わり、身を捩る事さえ困難になっていた。

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☆ その40=上気した柔肌。

 三宅はようやく鞭を掌から落とした。

鞭が止むと、咲織は泣くような悲鳴を上げ続け、細い躯を奥の筋が千切れそうに痙攣させた。

 ごぶ、ごぶっと謂う微かな音と共に開いた口から血のような涎を垂れ流し、咲織は針に掛けられ吊された魚の様に躯をピクピクと引き攣らせた。 流れる汗が幾つも浮んだ血玉を吸って股間に集まり、桃色の秘唇を染め上げて床に滴った。

 睫は伏せられ、口を微かに開き、真白い柔肌を上気させ、血を流して吊された均整のとれた裸身は、凄惨で居ながら、眼を逸らす事の出来ない婬らさを放っていた。 禍禍しさと清らかな美しさとがそこには満ちていた。

 三宅は、咲織の足許に蹲ると、咲織の白い脚を聖なるもののように押し戴き、舌を這わせ血の汗が浮かんだ白磁の柔肌を飽くことなく舐めた。

 濃緑のベットに横たえられた咲織の裸身は、あちこちに付いた惨たらしい赤い傷故に一層白く光り輝いていた。 三宅は慈しむように咲織を俯かせ、無惨にも腫れ上がった小振りな尻の円味に唇を這わせる。 苦い味が疼くような後悔の念を刺激した。 傷はやがて癒えるだろう。 何者にも穢されたことが無かったかの様に、一月も経たない内に元の綺麗な膚を取り戻すだろう。 しかし、同じく穢れを知らなかった咲織の心は、この部屋に入ってくる前に戻ることが有るのだろうか。 三宅は咲織の汗を味わいながら、胸を突き刺す痛みに眉間に深い皺を刻んだ。

「あぁぁぁ。」
 悲鳴にも似たうめき声と共に咲織は眼を醒ました。 躯中がひりひりと病めて、熱かった。 熱球となった尻を何かが這い、這った所から甘ったるい擽ったさが痛みを優しく癒してくれていた。 頭を巡らして、三宅の姿を確認すると未だ無垢な少女は美貌を和ませ、再び瞳を閉じた。 擽ったさは次第に快感を伴って、女の性を目覚めさせる。 胸に痒いような快感が降り積もり、堪らず喘ぎ声となって唇から立ち上っていった。

「感じるか。」
「くすぐったいです。」

「もうずく良くなる。」

『はい。 分かる気がします。 もう、気持ちいいです。 蕩けていくのが判ります。 ご主人様の方へと。』
 
三宅は、咲織の脚を拡げ、桃色に彩んだ秘唇を口で押し開け、舌で陰部全躯を舐め上げていく。

 咲織は、ぴくっと躯を震わせた。先程までの擽ったさとは違う明らさまな愉悦に初めて襲われて、咲織は戸惑った。 

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☆ その41=肌さえ邪魔です

『これが、感じると謂うこと? この甘い刺激が。 あぁ、もっと浸っていたい。 これが、女の悦びなの? それをご主人様が私に与えてくれている。』

「随分、濡らしている。 気持ち良いか。」
「はい。 とても、良いです。」

「もっと、もっと感じさせて遣ろう。 罰を堪えたご褒美だ。 俺のさがを受け入れてくれた標しに。」
 仰向けにされ、尻に痛みが走ったが、躯中を満たしている熱い期待の方が遙かに大きかった。 咲織の中に拡がる痛みと熱が、三宅の存在を直に伝えて来た。 それをさらに確かなものにしたくて、力一杯両手両脚で三宅に抱きつき、胸に顔を埋めた。

 『あぁ、ご主人様。 やっぱり、やっぱり、咲織はご主人様が好きです。』
 心についた汚れを洗う涙が吹きこぼれた。

 三宅は手を伸ばし、咲織の秘部を優しくそして情熱的に撫でる。 三宅の指が動く度に、三宅の存在は大きくなり、咲織を圧倒した。 三宅の唇が咲織の胸を腹を頸を這い、咲織は果ての無い深海の中を漂った。

 躯中が粘る海水に満たされ、藻掻く事も出来なくなってくる。 その不自由さが嬉しくて何時までも浸っていたかった。 三宅の躯温は咲織のそれと一躯になり、溶け込むかの様だった。 咲織の全ての神経が三宅を求めて見えない触手を伸ばしていく。 それを薄い肌が防壁となって拒み続ける。 躯の芯以外はどうしても、神経も肉も肌をも越えて、三宅と融合できない。 確かに、咲織は躯の芯で三宅と繋がっていた。

『あぁ、どうして、肌なんかあるの。 肌さえなければ、ご主人様ともっと一躯になれるのに。 ご主人様の中に溶け出せるのに。 ご主人様が秘唇から溶けて躯の中に入って来るように。 咲織もご主人様の中に入り込みたい。 一つに成りたい。』
 
 その想いは、脳で形に為る前に細胞の中に融けていった。

 咲織は、脳髄を貫く快感を感じて大きく揺れた。 一瞬気が遠くなりまた戻る度に、さらに大きな快感に襲われる。 余りの悦びに怖くなって、三宅の胸に掌を当てて、突っ張った。

「あっ、あぁぁぁぁ。」 
 咲織は躯の奥で三宅を感じ、それと同時に生まれて始めてのオーガズムに達した。

 達した後も三宅は咲織の躯中にキスをし、両手で愛撫し続けた。 咲織は快感の海に漂いながら、そっと瞳を開けた。 見上げると、三宅の顔がサイドライトに照らされていた。 
 その彫刻の様な三宅の顔に見惚れながら、その想いの他柔らかな頸筋に何度もキスをした。 性の歓びとは違う、父の膝に抱かれている時の安らぎを覚えた。 胸の底にしっかりと暖かな幸せの海が揺蕩っていた。

 『どうして、私は幸せなんか感じて居るんだろう。 あんなに痛かったのに。 あんなに酷い目に遭わされたのに。 一杯、いっぱい打たれたのに。 手なんかでバージンさえ奪われたのに。 憎んでも憎みきれない筈のに。 どうして、憎めないの。 どうして、愛しくなんか想うの。 どうして、触れていられるのが嬉しいの。 どうして、離れるのが怖いの。 こんなにも時が、咲織をご主人様から引き離す時が怖いなんて。』

 答えは肌から伝わる三宅の存在以外に見つからなかった。 この時間が続くことだけを願った。 何時までも、三宅を感じていたいと念じながら、いつしか自分も三宅の背に回した手で静かに三宅の存在を確かめように撫で回し、三宅の肌を舐めていた。

三宅に触れられている肌、口づけされている粘膜、三宅を撫でている手のひら、舐めている唇と舌、そして触れあっている肌から幸せが押し寄せてくる。 さらなる幸せ、快楽を求めて咲織の唇が掌が三宅の躯を貪欲に這った。

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☆ その42=陽を飲んで。

『どうしてだろう。 ご主人様の肌を舐め尽くしたい。 美味しいわけでもないのに。 ううん、美味しい。 確かに美味しい。 どんな物よりも。 今までは男性なんか気持ち悪くて近づくのも嫌だったのに。 不潔だなんて思えない。 愛おしさが湧いてくる。 幸せを感じられる。』

 咲織の気持ちを察したのか、三宅はひょいと咲織を持ち上げ、咲織を自分の上に乗せた。 咲織は自然に三宅の首筋から胸、そして腹へと唇を這わせる。 その間も三宅は咲織の背を胸を優しく愛撫する。

「おれもいかせてくれないか。 おまえの口で。」
「はい。 でもどうしたら・・・。」
 素直に言葉が出る自分に驚いていた。 その中にさえ歓びが溢れていた。

「当然、初めてか?」 
「じゃあ、修行しなさい。 奴麗になった以上、口もお尻もご主人様の性のはけ口だ。 謂う通りにしなさい。 まず、太股から股間へチロチロと舌で舐めて。」
 返事の前に咲織は三宅の腰にしがみつき、裡股に舌を這わせていった。 時折、三宅は咲織の頭を掴んでまるで道具の様に移動させる。 咲織は荒っぽい指示の儘に唇を這わせ、舌と唇で舐め続ける。

 三宅が咲織の手を取って、自身の怒張に導いた。 咲織は三宅の手をはね除けて、手を引っ込めた。

『あっ、熱い。』

「嫌がるな。 奴麗のおまえがこれから一番大切にすべき物だ。」
「い、いいえ。 ただ、びっくりしただけです。」
 咲織はおずおずと三宅の怒張に手を伸ばす。 それは咲織の想像を超えて、熱く滾り逞しかった。

「口に含んで、アイスバーを食べるときみたいに舌でなめ回しなさい。」
 咲織は、言われるままに口に含んだ。 まるで、口中を焼き尽くす太陽を食べたみたいな気がした。 

『怖い。 でも、嫌じゃない。』

 言われるままに舌を絡め、舐めた。 

「もっと、下の方まで口に入れて、いっぱい舐め回してくれ。」

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☆ その43=涙を嘗め取って。

『はい。 こうですか。』

 咲織は思い切って唇を開き、まるで神を迎え入れる様に口の中に熱い怒張を含んだ。

「手で玉や色んな所を愛撫するのも忘れるな。」
 そう言って、三宅は咲織の手を取って、自らの躯の上を這わせた。

「うまいぞ。 その調子だ。」

『はい。 これでいいですか。』
 咲織は三宅の顔を盗み見た。 今まで見たことのない、何か透明な表情だった。 それが愉悦の表情を時折見せる。 咲織は三宅が自分の口や手の動きに反応してくれるのが嬉しかった。

 やがて、三宅は咲織の頭を両手で包んで、上下に激しく動かした。 嗚咽が漏れそうになりながらも、咲織は三宅の怒張から口を離すまいと舐め続ける。

 三宅は咲織の苦しみなど意の外の様だった。 いや寧ろ、苦しみを与える様に、それが奴麗だとでも言う様に咲織の頭を好きに揺さぶった。 三宅の灼熱が咲織の口を焦がして、喉の深くを突く。 苦しみにえづき、空気の無い世界に漂いながらも咲織は却って愛しさが込み上げてくるのを感じていた。 咲織は自ら苦痛を求める様に三宅の怒張に喉を突かせた。

「うっ。」
 声と共に、咲織の喉に粘っこい液躯が注がれた。 思わず、咲織は頭を持ち上げ、吐きそうになる口を手で押さえた。

「飲め。 それが俺の精だ。」
 目を白黒させながらも咲織は必死で飲み込もうとして、噎せた。 吐くまいとしながらも、細い肩を引きつらせ、咳き込んだ。 

「飲み、ました。」
 ほっとした顔で咲織が言う。 何処か誇らしげな貌だった。 
「良くできたな。 初めてにしては上出来だ。 さすがにマゾ奴麗だけのことはある。 元々婬乱なのだろう。」
 口では酷いことを言いながら、咲織を見つめる目が優しい。 まだ、上下にあぶついている咲織の背中をさするように抱き、咽んで流れた涙を舐め取った。

「本当に俺の奴麗でいてくれるな。」
 静かに三宅が聞いた。
「はい。」
 咲織は三宅の腕の中で、こっくりと頷いた。 咲織は母を求める子猫のように三宅に抱きつく。 三宅は寄る辺を探す子猫をしっかりと抱き留めた。  

 咲織の胸の中に甘い騒わめきがさざ波の様に押し寄せてくる。 疼く様な切なさがなぜか心地好かった。 カーテンの隙間から射す光に目を開けた。 隣に三宅はもういなかった。 朝食を載せたワゴンがベットサイドに置かれている。 ワゴンの上に手紙が載っていた。

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☆ その44=肌が求めた。

「奴麗へ。
  出張の為に先に部屋を出るが、ホテルは夕方まで取ってある。 おまえは、ゆっくり 休日を過ごせば良い。
  尻は痛むか。酷い事をしたとは思うが、反省も後悔もしていない。 あれが、私の望 んでいた形なのだ。 おまえが訴えると謂うのなら、訴えれば良い。 おまえがそう思うなら、確かに強姦傷害罪であることは免れない事をしたのだから。
  おまえの寝顔は、安らかで綺麗だった。
  きっと、また直ぐに逢いたく為りそうだ。 そしてまた、酷い事をするだろう。
  おまえが、奴麗で居てくれることを望んでいる。
  傷薬を置いておいた。 よく、塗っておきなさい。」

 涙が頬を濡らしていた。 冷たいものでは無かった。 

『また虐めてください。 咲織は奴麗で居ます。』

 ベットに腰掛けると尻が痛んだ。 何故かその痛みが愛くて、嬉しくさえあった。 肌が三宅を覚えている。 躯に三宅が刻まれた。 その切なく甘ったるい余韻に浸りながら、ゆっくりと朝食を愉しんだ。

 囚われ者の幸福感は、月曜の朝にも続いていた。 浮き浮きした気分で、出社して来た細木副社長と男性秘書の沢木にコーヒーを煎れた。 沢木と一日のスケジュールを確認し、指示された文書の作成やネットワークを使った調査事務にあたる。 三宅と過ごした嵐の様な夜の後でも日常を迎え、日常の中で普通に働ける事が不思議だった。 三宅との出来事が頭の片隅にどっかりと存在しているのを知りながらも、それを意識に上らせる事無く日常に身を置いて居られた。 時は知らぬ間に過ぎていった。

 尻の傷が癒えるのに歩調をあわせ、魔法が解けて往くように寂しさが訪れて来る。 職場に居る時には忘れた振りをして居られても、マンションで一人になると謂い知れぬ寂しさが闇の様に舞い降りる。 咲織は闇の底に沈んでいく。

 父が愛用した焦げ茶の大きなソファーに身を預け、オットマンに脚を委ねた。 そうすれば、咲織はいつも安らぐ事が出来た筈だった。

 壁際に置かれたローズウッドのデスクに幼い咲織を抱えた父の写真が立てられている。父は生前、頻繁な出張に便利だからと東京駅に程近いこのマンションを買って、週の大半を此処で過ごした。 事業は順調に拡大していたが、その分咲織は父との時間を奪われた。父の死後、咲織は母を鎌倉に残してこのマンションに移った。 そして、父を感じられる此処で少しでも長く過ごして居られるようにと進学を止めて、今の商社に就職した。 商社は父が会社を興す前に勤めていた会社でもあった。 

 研修で気落ちする事があっても、此処に身を置けば忘れる事が出来た。 それが今は却って一人である事を思い知らせる牢獄にさえ感じられる。 肌は三宅を覚えていても、今ここにはいない。 嵐の中を行く昂ぶりを知った今、何も起きない静かな時間は闇だった。

 普段は落ち着く茶と黒で統一された室内も、父の趣味が色濃く残る調度や壁の絵画も咲織の孤独を強めるばかりだった。 咲織の瞳に映っている背の高いワーキングチェアの上に父の姿は無かった。 咲織は三宅の携帯番号も知らなかった。 窓の外では、濃紺の夜の中に宝石箱をひっくり返した様な都会の灯りが、咲織とは関わりなく瞬いている。 咲織は三宅から勧められた本を読み返した。 人格を無視され、過酷に玩ばれ続ける主人公に憧れる自分を見つけた。

『欲しいです。 ご主人様の証が。 この躯を永遠に苛む消えることの無い確かな証が。 どうか、私に標しをください。』

 咲織は胸を強く抱きしめ、震えるのを堪えた。 肌が三宅の肌を求めた。 肉が三宅が呉れた鞭の痛みにさえ恋い焦がれた。 夜は余りに静かで、長かった。
  
 ピンクの兎がディスプレーに現れたのは、十日も経った夕方だった。
「週末を空けて置くように。」
 素っ気無い文字に込められた意味に胸がときめいた。

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☆ その45=鏡に映して。

『また会える。 きっと会える。 後二日、二日過ごせば、ご主人様にまた会える。』

 咲織は空気が輝くのを感じた。 咲織の斜め横にあるガラス扉を通して、夕陽に焼かれた空が朱く光っていた。

 考え倦ねた末に、エステに予約を入れた。 三宅に剃り上げられた恥部には、早くも毛が伸び出し、醜く思えた。 否、自分と三宅の間に立ちはだかる穢らわしい魔物にさえ思え、咲織は躯をぶるっと震わせた。

 白い大理石の床に白いソファ。 高級を売り物にするそのエステは、何処も清潔感に溢れていた。

「今日は永久脱毛のご予約でございましたね。 こちらのシステムは完璧との評判を戴いております。 お時間は少し掛かりますが、痛みはございませんし、他店と異なり再発毛の心配も全くございません。 ご用意が整いましたら、案内の者が伺いますので、そちらのラウンジでお休みください。」

 慇懃に謂われて、咲織は不安になった。

『二度と生えないのね。 二度と戻れないんだ。 それで佳い。 それが佳い。』

 自分に言い聞かせた。
 
「完全に脱毛なさるんですね。 履かれるビキニにお合わせして脱毛できますが。」
「良いです。 全部脱毛してください。」
 施術は、本当に長い時間が掛かった。 その間、同性とは謂え、秘部を視られ続け、肌に触れられるのは耐え難かった。 尻にはまだ鞭の跡が薄蒼く染みの様に残っている。 マゾの淫乱だと思われはしないか、奴麗だと悟られたのではないかと畏れ続けた。 そしてその事を怖れる自分が哀しかった。 

 痛みは無いと謂ったが、細い針を刺すチクチクとした痛みが三宅の与えた痛みを思い出せた。 それが咲織を疼かせ、濡れては居ないかと、恥ずかしさに苛なまれた。

 マンションに帰るとすぐにクローゼットを開き、大きな姿見に裸身を写した。 穢れの無い少女の様に、咲織の股間はつるんとしていた。 脚を拡げてみる。 秘唇にも一毛も残って居なかった。  咲織の秘部は、まだ少女のように艶やかで色素の沈着も無い。 ほんのりと他の白い肌に桜色を載せ、すっと縦に線が走っているだけだ。 確かにこの方が、奴麗には相応しい。 咲織は滑らかな下腹部を何度も撫でて確かめた。 鏡映る無毛の躯は清らかで、だが、それは三宅の物、奴麗の証しだった。 それ故に咲織には愛おしく、そして婬らだった。 見ているだけで血が熱く疼き出し、咲織は慌てて鏡を閉じた。

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☆ その46=逃げたいのに。 

『悦んで貰えるだろうか。 ご主人様は、私の努力を誉めてくださるだろうか。可愛がって呉れるかしら。』

 ご主人様に可愛がられると謂うことは、痛みを与えられることだと気が付いて、咲織の胸は痛みを発した。 同時に名状しがたい熱を躯が発してくる。 気が付くと自分の細い指が無毛になった秘唇に伸びていた。 

『もう、咲織は普通の娘じゃない。 普通には愛して貰えない奴麗。 でも、奴麗でも・・・。ううん、奴麗にしか味わえない幸せがきっとある。 少なくとも、ご主人様に構って貰える。 ご主人様を悦ばせれる。 ご主人様の笑顔を一人占めに。 ご主人様の腕中で。』

 その日、胸騒ぎを覚えながら時が流れるのを待っていた。 時は焦らす様にゆっくりでもあり、また、怖い程早い様にも思えた。 何をしているのかも判らない裡にその時は来た。

 細木副社長の打ち合わせが遅れた。 今か今かと過ぎて行く時が針となって咲織の胸に刺さる。 

「今日もお疲れ様でした。」
 細木の後ろ姿を見送るとすぐ、咲織は駈け出していた気がする。 今日はノーパン、ノーブラでも、街を行く人の視線が余り気にならなかった。 心はもう待っているかも知れない三宅に向かっていた。 

 同じホテルに入り、指定された部屋の前に来ると不安が顔を覗かせた。 服装をチェックする。 白地に黒のハウンドツース柄のざっくりしたミニワンピに白いジャケットとおとなしい出で立ちだった。 

『ご主人様にどう映るかしら。 気に入って貰える?』 

 不安ばかりが湧いてくる。 胸の動悸が高鳴り、心臓の脈打つ音が聞こえそうだった。  黒いハイヒールが紅い絨毯の上で震えていた。 オープントゥから覗く爪をもっと綺麗な赤に塗れば良かったと悔やんだ。
  
『足元にも気を使えない女だと嫌われたら? ご主人様の命令を聞けなかったら?  耐えられない責めを受けたら? 捨てられる?』
 
 逃げ帰りたい。 その衝動を止めていたのは、三宅の肌を求める咲織の肌だった。 何よりも肌が、そしてスカートの下で守ってくれる者を失った秘唇が三宅を求めていた。 

 カツカツと音が響き、長い廊下の向こうから人影が近づいてきた。

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☆ その47=黒いガータ-ベルト

 その人影に見咎められるのを怖れ、咲織はようやくベルを鳴らした。 咲織の胸の動悸さながらに高い音が鳴った。  

 想いのほか三宅はにこやかに出迎えてくれた。 その笑顔に膝が抜け、その場にへたり込みそうだった。 ぐらつく咲織の躯を三宅が抱き留めた。 

「俺と二人の時の奴麗の正装は何だった?」
 抱かかえる様に咲織を部屋に入れると、三宅はいきなり冷たい声を浴びせた。
「は、裸です。」
 逡巡の後、押し寄せて来る羞恥を跳ね退ける様に咲織は答えた。 ドアの前で襲われた不安を忘れていた。 今はただ三宅が怖かった。 三宅に叱られる事が、三宅に嫌われる事が、三宅のいない世界に放り出される事が、怖かった。 

「じゃあ、突っ立ってないで脱ぎなさい。」
「はい。」
 閉じられたドアの前で咲織はジャケットを脱ぎ、ワンピースのショルダーストラップに手を掛けた。 足許からワンピースを抜き取った。 

「あっ。」
 空気が肌に直接ふれた。 無毛になった秘唇をエアコンが作った人工の冷気が弄った。 
ワンピースを脱いだだけで、それだけで咲織は下着も身につけない全裸になった。 余りに簡単だった。 

『裸。 何も身に着けてない。 咲織は今日一日、裸で会社に。 これが私? これが奴麗。 裸が奴麗の正装。 咲織は普通の女の子じゃなくなったんだ。 ご主人様の彼女でも無い。 奴麗。 ただの奴麗。 裸が正装の奴麗。』

 恥かしさに正面を見られず、視線を落とした。 黒いストッキングとガーターベルトが一層裸を強調していた。 正に奴麗の正装だった。 性の供物、存在するだけで婬らな女。 膝が抜ける程に恥かしさと哀しさで血の気が引いていった。 壁に寄り掛かる様にして、ようやく咲織は倒れるのを堪えていた。 

「まるで娼婦だな。 部屋に入った途端にキスもしないで、いきなり裸か。」
 三宅は、からかうように嗤った。 その声が咲織の胸に響く。 羞恥が炎となって胸を焦がした。 消え入る事も出来ず、咲織は自分をからかう三宅の視線に打たれて、項垂れていた。 その窮状を救ってくれたのは、他ならぬ三宅だった。 三宅は柔らかに咲織の肩を抱き、唇を重ねて来た。 軽いキスだった。 縋ろうとする咲織の唇はその場に残された。 それでも、咲織は居場所を見付けられた。
 ほっとしたのもつかの間、三宅の掌が無毛となった下腹部に伸びて来た。 鑑定士が品定めする冷酷な触れ方だった。

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☆ その48=脚を開いて。

「脱毛してきたのか。 いい心がけだ。 店で何と言ったんだ? 奴麗ですから、毛は要らないとでも言ったのか。 それともご主人様のご命令でと?」
 冷たい声だったが、引き締まった頬が柔らかに緩んでいた。 咲織は微笑みを浮かべ、顔を左右に振った。

「ちゃんと説明しなかったのか。 次からはちゃんと奴麗ですと言いなさい。 どんな次があるかどうかは判らないが。 奴麗は決して恥ずべきものではない筈だ。 少なくとも奴麗であるおまえにとって、そして、おまえを所有している俺にとっても。」 
「はい。」
 三宅の言葉に胸が熱くなった。 伝えたいもので胸の中がいっぱいに膨らんだ。 なのに、口から出たのは一言だけだった。 その膨らんだ胸のまま、咲織は今日初めて三宅を真っ直ぐに見た。   

「それでも良く、ツルツルにしてきたな。 おまえには同じ女性に見られるのも、触れられるのも恥かしかったろうに。」

『ご主人様、それを判って・・・。 嬉しいです。 綺麗にしてきた甲斐がありました。 それだけで、そのお言葉だけで、どれ程、咲織は・・・。』

 涙が溢れそうだった。 縋り付くべき三宅は手を伸ばせば届く近さにいた。 それなのに、手は動こうとしなかった。 その距離が自分の立場なのだと咲織は思った。

「何故、自ら脱毛してきた?」 
「ご主人様のご命令でしたから。 それに、自分でも毛が邪魔に思えたんです。 ご主人様と私を隔てる邪魔ものだと。」  
 
 三宅は心からの笑みを見せた。 暖かな包み込む様な笑みだった。 

「折角、恥かしげも無く幼女の様に剥き出しにして来たんだ。 たっぷりと見てやろう。 そして、責めてやろう。 秘唇から婬蜜が溢れる処が良く見えるだろう。」
 咲織はまた居場所を失い、身を捩らせた。 それがサディストの嗜虐心を昂魔らせるだけの仕草とも知らずに。 

「何をぐずぐずしている? ちゃんと立ちなさい。 そして脚を開け。 壁と壁に両足が届くまでだ。」
 三宅の語気に打たれ、咲織は脚を開いていった。 ドアの幅しか無い入り口とは言え、咲織にはとてつもなく広かった。 これでもかと込み上げる羞恥に身を焦がしながら脚を開いても壁はそのまだ遠くにあった。 小柄な割にはすらりと長い咲織の脚でも直角以上に拡げなければならなかった。 股間の本当に幼女の様に筋が入っただけの秘唇が開かれるのを感じた。 湿った秘唇の蔭に隠れた花びらに冷気が触れた。

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☆ その49=凍える視線、火照る肌。

 三宅の視線に素裸を、隠してくれる物さえ自ら捨て去った剥き出しの秘唇を晒している事を痛い程感じた。 時は意地悪くその歩みを止めたかの様だった。

 脚を閉じたくとも一旦開きに開いた脚を閉じるにはハイヒールは向いていなかった。 立っているだけでも後ろ手でドアに躯を支える必要があった。 今再び閉じようとすれば、無様に尻を突き出して床に倒れそうだった。 それに何より、閉じる事を三宅が許してはくれない。 そう思うと躯は動かなかった。 

 咲織は見えない縄で縛められている事を、ご主人様の命令が無ければ何もできず、命令のままに全ての苦しみを受け入れる奴麗と言う存在に自らなってしまった事にまだ気づいてはいなかった。 

『ああ、そんな、そんな目で見ないでください。 恥かしいです。 ご主人様はちゃんと服を着ていらっしゃるのに。 私だけ、咲織だけ、裸。 まだ陽が高いのに。 脚を閉じたい。 身を隠したい。 でも、躯が動かない。 ご主人様に叱られてしまう。 そんなこと出来ない。 あぁ、見ないで。』
 
  値踏みをする様な三宅の鋭く酷薄な視線が痛かった。 視線の針に苛まされながら、   
咲織は同時にその見られている剥き出しの秘唇の奥が熱く疼くのを感じた。 その事が一層咲織を羞恥の業火が焼いた。

「良く似合う。 肌が白いからな、秘唇も本当にほんのりと桜色を載せただけだ。 秘唇が黒ずんでいる方がいいと言う奴もいるが、俺はそう言う女には興を削がれる。 黒ずんでいては例え鞭を浴びせても痛みが判らないからな。 それに何より、美しく無い。 白いからこそ、縄が映える。 血の色が鮮やかになる。 奴麗は性の道具だが同時に鑑賞に堪える事も大切だ。 それが薄汚れていては、見る気もしない。 責める気も失せる。 もちろん、精を注ぐ気にもならない。 おまえはいい奴麗になる。」 
 三宅が言葉を重ねるに連れ、咲織は哀しみに身を苛まれた。 

『咲織は性の道具、鑑賞物。 それだけなんですね。 それだけ、今も、そしてこれからも・・・。 奴麗が愛される事はあるのですか。 何時の日にか。 奴麗がご主人様を思うその百分の一でも。』
 
 いたたまれなかった。 逃げ出したかった。 叫びたかった。 が、咲織には何も出来なかった。 三宅の冷たい視線が肌を刺し、そして切れない糸となって躯を縛る。 凍る様な視線を肌に浴びながら、咲織はその肌の内側でふつふつと熱くなる肉を感じていた。 

「秘唇を開いて見せなさい。 おまえはまだ幼女の様に普段は秘唇が閉じている。 一年もしない裡に何時でもその下の花びらを剥き出しにしている様になるだろうがな。 今は自分の掌で両側からよく見える様に開きなさい。」

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☆ その50=自ら開いて。

『そんな。 そんな恥ずかしいこと。 何処までご主人様は咲織に。 動かない。 手が動かない。 叱られる。 ご主人様を怒らせたくない。 楽しんで欲しいのに。 どうしたら・・・。』

 咲織は華奢な躯を一層小さくする様に両手を腹の上で重ねたまま、小さく震えるしかなかった。 背が付く程近いドアの向こうを人が通る気配がした。 びくんと躯を震わせた。

「咲織の花びらを見てください、と言って開くんだ。」
 怒りを押し殺した様なかたい声だった。 その声に怯えた掌がおずおずと股間に近付いていく。 が、秘唇に達した処で止まってしまった。

『濡れてる。 どうして。 恥ずかしい。』

 咲織は朱を帯びた貌を伏せた。 その瞳にたわわに実った乳房が映る。 その頂きで、震える小さな桃色の蕾も。 咲織の怖れを表す様にぷるぷると震えていた。

「そんな簡単な事も出来ないのか。 奴麗失格だな。」
 その言葉に咲織の頬を冷たい涙が伝った。   

「ご主人様の命令に従わず、泣くとは。 涙で許されるのは普通の彼女だ。 奴麗は泣けば泣く程、ご主人様に責められると覚えておきなさい。 涙はサディストの好物だからな。 責められたいなら、辱しめを受けたいのなら泣く事だ。 褒められたいなら、涙を流しても命令に従いなさい。 ほら、見せてご覧。 おまえの花びらは綺麗だった。 綺麗なものを見せるのに恥ずかしがる必要はないだろう。」
 三宅の口調は優しくなった。 その事が一層咲織の涙を溢れさせる。 

「おまえは、その愛らしい指を見せるが恥ずかしいか。」
「いいえ。」
 三宅の優しい口調に躯が解れたのか、咲織は小さくとも声を出せた。

「だったら、花びらも同じだ。 女性なら付いていて当然のものだ。 それを見せるのに恥ずかしがるのは可笑しいだろう。 ほら、咲織の花びらを見てくださいと言いなさい。」
「咲織の花びらを見てください。」
 声が出た事に咲織は驚いた。 そして、自分の唇から出た言葉が自分の耳に帰ってくる。 その言葉の恥ずかしさに胸が詰まった。 それでも、言葉の呪力か、指が動き、秘唇を左右に押し開いていた。 濡れた花びらをそよがす冷気に、躯が凍った。

「それが出し惜しみした花びらか。」
 三宅は態とらしく咲織の前にしゃがみ込んだ。 がくがくと細いが若さの詰まった太腿が震えた。  

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☆ その51=恥ずかしくて堪らないのに。

「見ないで。」
 咲織は小さな声だったが叫んでいた。 叫んで、三宅の怒りを怖れ、躯を震わせた。 

「見てくださいと言ったから、見てやっている。 それなのに、見ないでとはどういう事だ。」    
「だって、だって。 恥ずかしくて、恥ずかしくて。」
 咲織はようやく言葉を吐き出した。

「ふん。 恥ずかしいか。 それは濡れているからか。 どうして恥ずかしいのに、濡れていると思う?」  
 三宅の言葉に咲織は首を左右に振るのが精一杯だった。 胸の中を羞恥と怯え、そして哀しさが渦巻いていた。 だが、そこには自分を追い込む三宅を憎む気持ちは影も無い事に咲織は気付いていなかった。

「奴麗はご主人様の命令一つでどんな羞恥も乗り越えなければいけない。 ご主人様を満足させるためだけに、自分の誇りを一切捨てるんだ。 だが、勘違いするな。 恥を知らない女は奴麗にはなれない。 そんな女に用は無い。 恥を知り、否普通の女性よりも羞恥心の強い女が自分のために恥を乗り越えてくれる、その風情がご主人様を悦ばせるのだと。 良く、花びらをこんな明るい部屋で自ら開いて見せたな。 それだけは褒めてやろう。」
 三宅は咲織の頭を撫でた。 渦巻いていた感情が胸を破り噴き出す。 咲織は泣きじゃくり、三宅の胸を目掛けて躯をぶつけていた。 滑らかな高級綿が熱い頬を柔らかに包んだ。 その奥から三宅の体温が伝わってくる。 咲織は声を上げてまた泣きじゃくった。

 三宅は震える咲織の頭を愛おしそうに見下ろしながら、そっと溜息を宙に漏らした。 咲織の肩を掴み引き剥がす。
「コーヒーが冷める。 こっちに来い。」
 言葉を残して、三宅はくるりと背を向けた。 咲織は蹌踉けながらも後を追った。

「何を突っ立っている?」
 窓際に置かれたソファの前で不意に振り向くと、三宅は呆れ顔を見せた。
「だって。」
 咲織はもじもじと躯をくねらせた。 

「だってなんだ? 奴麗がご主人様の前で立ってて良かったか?」
「すいません。」
 咲織は三宅の足元に跪いた。
「違うだろ。 四つん這いになる前に、俺に会ったら裸に為り、膝を抱え全てを曝すんだ。 ご主人様の前でひっくり返り、両手両足を曲げてだらしなく構われるのを待っている犬の様に。 そう謂っておいた筈だが。 忘れたか。」

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☆ その52=踏み付けられた乳房。

「すいません。お許しください。」
 また泣きたい気持ちを辛うじて咲織は抑えた。 胸が痛かった。

『どうしよう。 叱られる。 でも、余りに羞ずかしい。』

 咲織は言われた事を思い出し、屈服の姿勢を取ろうとした。 が、足が竦んで動かない。

「俺の謂うことが聞けないのか。 鞭で打たないと従えないなんて、奴麗じゃなくて、家畜だな。」
 咲織は不意に尻に鋭い鞭を受けて、甲高く鳴いた。

 痛みに力が抜けた。 崩れる様に床に転がる。 叫びたいのを堪えて、仰向けになる。 両脚を胸まで曲げていく。 三宅の鋭い視線に押され、赤ん坊がチーチーをするみたいに両手で抱えた。 秘唇を尻穴までも冷たい空気が撫でていく。 全てを三宅の前に曝した屈服のポーズを採りながら咲織は涙を啜った。

「哀しいか。 まだ、奴麗の身が哀しくて遣りきれないか。 恥ずかしくて泣けてくるのか。 受け入れるんだ。 俺の事だけを想え。 恥ずかしいだろう。 でも、染みついた習慣なんか忘れなさい。 俺の奴麗になりきるんだ。 全てを俺に晒すことで心の底から奴麗になれる。 それまで、打ち続けて遣ろう。」
 三宅は、差し出しされた格好の咲織の秘部を部屋履きで踏みつけた。

『判っています。 咲織は奴麗だと。 恋人では無く奴麗に過ぎないと。 判らない、決意したはずなのに。 どうしたいの、私は。 奴麗は愛される事は無いのですか。 本当に恋人になる事は出来ないの。』

 躯を窮屈に折り曲げた姿勢では、声にならなかった。

「諦めろ。 俺なんかに惚れてしまったのが、失敗だったんだ。 一度、蜘蛛の縷に罹ったら逃げ道は無い。 じたばたせずに蜘蛛の為すが儘に受け入れて、命を吸い取られるしか無い。 命を吸われる時の快感は素晴らしいそうだぞ。 吸う側の蜘蛛には絶対に知り用の無い快樂だそうだ。」 
 三宅は、ソファにゆったりと腰を落した。 咲織の乳房なぞオットマンに過ぎないと言わんばかりに部屋履きを脱いだ足をどかりと置いた。
「市販のコーヒーでも、こんなにいい環境だと旨く感じるものだな。 足裏からおまえの乳房の弾力を感じる。 良い気持ちだ。 窓の下のコンコースを行き交う奴等には想像もつかないだろう。 自分の頭上で、素晴らしい美少女を裸にし、その豊かな乳房を踏み台にして寛いでいる奴が居るなんて。」
 三宅は、踵で乳房を踏みつけ、さらに片足を開ききった秘部に押し付けて、咲織から呻き声を引き出した。

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☆ その53=高く売れる女?

『気持ち良いですか。 良い気分ですか。 私を貶めれば貶めるほど、愉しいですか。 私は、全てをご主人様に差し出して、啼いていれば良いんですね。』
 
 三宅の顔を下から伺った。 三宅の目が笑っている。 コーヒーを飲みながら、時々裸足の足を咲織の丸く隆起した胸やすっきりとした腹、柔らかな粘膜と動かし、その度に表情を変える咲織の反応を楽しんだ。 

『ご主人様が楽しそう。 じゃあ、私も奴麗を愉しもう。 もっと咲織を好きに扱って下さい。』

 三宅の足が咲織の躯を撫で、踏みつけ、動く度に、咲織の躯の奥が少しずつ熱くなる。

『不思議。 ここまで侮辱を受けているのに。 躯が反応する。 愛おしさを、幸せな気分さえ感じる。』

 咲織は、頭を持ち上げて乳首を足裏で転がす三宅の爪先に口付けをしていた。 自分でも信じられない行動だった。 三宅の体温に触れた唇からうっとりと甘い蜜が喉を降りていく様だった。 咲織は唇を開きその足指を口に含んだ。 三宅の味がした。 本当は味など無く少しざらついた感触を舌に感じただけなのに、咲織には甘く切ない味に思えた。

『好き。 やはり、咲織はご主人様が好き。 躯が蕩けていく。 ご主人様に向かって。』 

 唇に足指を嘗めさせながら、三宅はうっとりと咲織を見詰めていた。 その三宅の慈愛の籠った眼差しに咲織は気付く事無く、口の中の足指に舌を絡めていた。 

「もういいから、四つん這いになりなさい。」 
窮屈な姿勢に痺れ始めた躯を起こし、三宅の方を向いて四つん這いになった。

 三宅は咲織の頭を掴み、股間に導く。 ズボンを下ろすと咲織の眼の前に肉の凶器が突き出された。 咲織は直ぐに口に含んだ。 舌を隆々と口の中を占拠する肉傘に舌を纏わらせていく。 強くしゃぶり付き、顔を前後に動かした。

「いいぞ。 たった一回で随分と上手になった。 練習でもしたか。 これなら、何時でも高く売れる。」
 三宅は業と冷ややかに言った。 三宅が感じている事は口の中で熱く脈打つ肉棒が何よりも物語っていた。

 咲織は三宅の肉棒を含んだまま、大きな瞳を上目遣いに三宅の顔に純な視線を向けた。 そしてすぐに口の中の熱い肉傘に絡めた舌をくねらせ、鈴口を舐め回した。

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☆ その54=もっと迎え入れたいのに。

『ご主人様が熱い。 ご主人様が私の口で感じてくれてる。 咲織の口はお役に立っていますか。 どうしたら、もっと感じて貰えますか。』

 咲織の舌の動きが滑らかになっていく。 熱に浮かされたように咲織は口の中の灼熱を啜った。 

「同じ所ばかり舐めるな。 時々放して、袋も玉ごと口に含んで転がしなさい。 それから、尻の穴にも舌を差し入れて舐めなさい。」

咲織は従順に従った。 少し苦い味がした尻の穴さえも汚らしいとは思わなかった。  三宅を悦ばせることの他に何も考えていなかった。 否、考える事出来ない程に夢中になっていた。 ただ唇の触れる三宅の肌が体温が嬉しかった。

「深く、喉の奥まで俺を迎え入れろ。」
 
 咲織は両手で三宅の腰に抱きつき、小さな口を目一杯に開いて三宅を迎え入れた。
「ぐぁ。 げふっ。」
 喉の奥に三宅の硬直が当たって、咽んだ。 だが、躯の奥深くが何かに満たされていく。 

『あぁ、ご主人様。 ご主人様の漲りが、熱が咲織の中に。 もっと、もっと咲織の中に入ってきてください。 苦しい。 でも、嬉しい。』
 
 息苦しさに少し緩める。 と、不思議な事に喉が三宅を欲しがった。 咽返り、息が出来ない苦しみを咲織の躯が欲しがった。 咲織は浅く咥えて息をし、そして次はもっと深くと、顔を沈める。 その繰り返しの途中で、三宅を見上げた。 三宅は満ち足りた表情で咲織を見詰めていた。 これ以上は無理と言う処まで咲織は三宅の硬直を飲み込んだ。 それでも唇は三宅の根元まで到底達してはいない。 

『全てを、根元まで全てを咲織の口の中に迎え入れたい。 ご主人様を飲み込みたい。』
 
 咲織は三宅の腰をひしと掴み、まるで顔を三宅の下腹に叩き込む様に硬直に喉深く突かせた。 胃液が一気に逆流してくる。 小さな背中で肩甲骨が苦しげに喘いだ。
「ぐふっ。 ごほっ。」
 思わず、三宅の硬直を放していた。 唇の端から泡を吹き、咳き込んだ。

『ぁぁ、こんな事も満足に出来ない。 もっとご主人様を迎え入れたいのに。』

 咲織は哀しい瞳で三宅を見上げた。 叱られても仕方ないと思った。 
「喉を拡げるんだ。 深呼吸をする様に。 次は放さないでくれよ。」
 三宅は意外にも優しく咲織の頭を撫でた。

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☆ その55=のたうちまわる。

 咲織は再び三宅の硬直を口に含んだ。 口の中を火傷しそうな三宅の熱が咲織の肉の中に染み込んで来る。 咲織は顔を沈めていった。

「ゆっくりだ。」
 三宅の声に応え、咲織はゆっくりと三宅の熱棒を迎え入れていく。 喉に当った。 やはり胃液が喉に込み上げて来る。 反射的に三宅の物を吐き出そうとした。 
 
「喉を拡げろ。 深呼吸だ。」
 叫ぶ様に三宅が命じた。 同時に上げようとしていた咲織の頭をがっちりと掴んだ。  息を求める咲織の本能をねじ伏せ、強い力で更に自分の下腹へと押し付けていく。 息苦しさに咲織の躯はひくつき、喘ぐ。 細い腕が宙を彷徨った。 

「いいぞ。 もっと深く。」
 三宅は喉の奥を突き破ろうとする様に、より深く突いた。
「がふっ。 ごぼっ。」
 逆流した胃液が口から溢れ、裸の胸を汚していった。 咲織の華奢な躯は木の葉の様に捩れ、喘ぐ。 息の出来ない苦しさに眼の前がぱちぱちと弾けた。

「ほら、ほら。」
 三宅は許してはくれなかった。 喉の関を越えて、三宅の長大な硬直は食道までも犯そうしていた。 こみ上げる吐き気に咲織は躯をくねらせる。 空気を求めて胸が大きく波打つ。 苦しげに乳房が揺れた。

「ぐぶ、ぐふ。 がはぁ。 んぐ、んぐ、ぐぁ。」
 大きな瞳は苦しげに瞬きを繰り返し、涙を溢れさせた。 細い喉はしきりに波打ち、喉の奥で咳き込む。 

「苦しいか。 もっと苦しめ。 それが奴麗だ。」 
 咲織の断末魔の苦悶など関係が無いとでも言う様に咲織の頭を前後にシェークした。
「ぐほっ。」
 引き離される瞬間にようやく咲織の躯は息を継ぐ。 すぐに三宅の硬直が喉を塞ぐ。

 三宅は咲織の頭を自分の快樂の道具として扱った。 どんなに華奢な躯を苦悶にのたうちまわらせようと、口から苦い汁を噴き出そうと、好きなだけ快樂を貪った。  
 
「飲め。」
 雄叫びが半ば意識を失った咲織の耳を打った。 三宅は更に激しく、咲織の顔を振り立てた。 喉を破った三宅の硬直が咲織の口の中で脈打った。

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☆ その56=咲織の口で。

 三宅の精が咲織の喉を打った。 咲織の細い喉が破れそうに咽返る。 それでも、三宅は精を放出しきり、愉悦を味わい尽くすまで咲織を解放しなかった。

「ぐほっ。 げふっ。 ぐ、ぐがぁ。 ごふ、ごふっ。」
 咲織は床の上で上気した桜色の躯をのたうたせた。 激しく咳き込む胸に肋骨が突き刺さりそうだった。 

「飲め。 俺の精だ。 ご主人様の命だ。」
 その声に喉に粘りつく精を飲み下そうとして、咲織は再び咽び、吐いてしまった。
「ごめんなさい。」
 哀しげに三宅を振り仰いだ咲織の大きな瞳は朱く腫れあがり、綺麗な顔は涙と鼻水と涎で汚れていた。 それでも否、汚れて却って咲織の美貌は引き立っていた。 悄気返ったその貌は幼さを見せ、愛らしくさえあった。

「汚い奴だ。 床まで汚して。 自分が汚したものだ。 綺麗になるまで舐めろ」
 三宅は咲織の貌に向け掛けた優しい笑みを飲み込み、尚も華奢な躯を苦悶に歪ませる咲織に冷たく命令を下した。

『あぁ、またご命令に従えなかった。 ご主人様の精を、本当に命を零してしまうなんて。 いつか、ちゃんとご主人様を喉の奥まで迎えたい。 胸までご主人様の熱で焼き尽くすほど。 ご主人様は。 ご主人様は少しは楽しんでくれたのかしら。 なら、あんなに苦しんだ甲斐があるけど。』

「私は、私の口はお役に立ちましたか。」 
「それは奴麗が訊くことじゃないな。 おまえは俺の奴麗だ。 俺の快樂のためにある性の奴麗だ。 俺は俺の愉しみのために、満足するまでおまえの躯を好きな様に使う。 おまえが悲しもうが、傷つこうが関係ない。 奴麗はただ命令に従えばいい。 責め苦をただ受け入れればいい。 痛みと苦しみにその躯をのたうちまわらせて俺の眼を楽しませればいい。 奴麗のおまえはその中で奴麗らしい愉悦を見出すのだな。 マゾに生れたおまえならそれが出来る。 そしてその歓びは奴麗にしか得られない深く暗い魔力に富んでいるそうだ。」
 三宅は鋭い視線で咲織の心を射た。 

『そこまで、そこまで言われなくても。』

 哀しみと恨みがましさの籠った瞳で、咲織は三宅を振り仰いだ。

「その瞳は、判っていないな。 ま、すぐに判る筈も無いだろうが。 徐々にその躯に判らせてやる。 奴麗の哀しみと歓びを。 そして、いつか本物の奴麗になれ。」
 三宅は立ち上がり、咲織の尻に鞭を振り下ろした。

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☆ その57=柔肌を飾る朱い帯。

「ひゃあ。」
 逃げる暇も与えられず、丸い尻たぼに鞭が炸裂した。 咲織は痛みに躯を丸める。

「尻を高く突き出しなさい。 四つん這いになり、自分の手で膝を掴むんだ。 痛ければ、その手に力を込めて耐えるんだ。 そうすれば無様な蛙の様に床に這い蹲る事も無い。」
 三宅の言葉にむらむらと湧き上がってくる疑問、哀しみ、反抗心、全ての感情をぐっと飲み込むと、咲織は言われるが儘に尻を高々と持ち上げた。 その屈辱的な姿勢が咲織の胸を一層言い知れぬ哀しみで締め付ける。 同時に鞭の痛みに怯えている筈の躯が鼓動と共に熱く脈打ち始める。 

『あぁ、また打たれる。 耐えられるかしら。 また叱られる。 褒められたい。 責めていい奴麗だと褒められたい。 ご主人様の悦ぶ顔が見たい。 どうして。 怖いのに。 躯が熱い。 それはご主人様が好きだから? どうしようも無く好きだから?』

 じりじりとする様な時間が通り過ぎていった。 咲織の捧げた丸い尻たぼが耐えかねた様にくねりだす。 

 三宅は三宅は鞭の恐怖が咲織に染み渡り、次いで痛みを自ら求め出すまで待った。 奴麗の素質がある女なら、マゾの血が流れる女なら、痛みは好意と共に疼きに変わるのを三宅は知っていた。 そして、咲織がそうである事を願っていた。 

「これはおまえの啼き声を聞きたくて、おまえがのたうつ姿を見たくて打つ鞭じゃない。 少しでもちゃんとした奴麗になれる様に打つ、調教の鞭だ。 奴麗は家畜と同じで鞭の痛みを身に染ませないと判らないからな。 だから、願い出なさい。 自分からご調教をお願いします。 いたらない奴麗を鞭打ってくださいと。」
 三宅は言う事を聞け、とばかりに鞭を唸らせた。 その高い音が咲織の胸を切り裂く。
「ご調教してください。 どうか、いたらないこの奴麗の咲織を鞭打ってください。」
 余りにく恥辱的な言葉に胸が塞がった。 小さな肩がわなわなと震えた。 それでいて至宮の奥がきゅっと収縮し、感悩の蜜を絞り出していた。 咲織はまだ躯が熱くなるのが、歪んだ感悩の慾望のせいだとは気付かずにいた。 秘唇が一人充血し、火照っている事にさえ。 ただ咲織は哀しみと怖れに胸を痛めていた。 

「いいだろう。 調教してやろう。 泣くんじゃないぞ。 おまえのためだからな。」
 三宅は鞭を振り下ろした。 咲織の小さくとも丸く若い肉の詰まった尻たぼを鞭は咬んだ。 風を切る音に続いて、緻密な肉を打つ高い音が響いた。 

 前回の鞭の痕も消え、乳を溶かした様に白い肌は艶々とライトの下で輝いていた。 その柔肌に幾条もの朱の帯がさっと浮かび上がる。 
「ひぃーーっ。」
 咲織の華奢な躯が揺れた。

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☆ その58=鞭が恋しい。

 三宅は咲織の躯の震えが収まるのを、細い息が整うのを待った。

「ぴしーーん。」
「はぃーーーん。」
 詰まった肉を打つ音が部屋を揺らし、咲織の高く細い啼き声が後に続く。

『痛い。 痛いです。 一体どれほど耐えればいいのですか。 ご主人様が満足されるまで? それは一体、いつ。 血が流れるまで? 壊れるまで?』

 三宅が幾つ打つと言わなかった事に気づき、咲織は心臓をきゅっと痛めた。 躯が怖ろしさに震える。 咲織はぎゅっと自分の膝を握り締めた。

「びちーーーん。」
 高い音を立てて、房の一本一本の帯が咲織の肉を咬んだ。
「あぁぁぁ。」
 痛みに胸が潰れ、啼き声すら上げられない。 焼け付く様な痛みが尻たぼから躯中に拡がっていく。 

 三宅は時を楽しむ様に、眼下で苦しむ咲織の綺麗な曲線を愛でる様に間を取ってを唸らせた。 幾つもの音が部屋の壁に染み込んでいった。 

「痛いです、ご主人様。 逃げだしたい。 もう許して欲しい。 耐えられない。 なのに、焼ける様な痛みが引いていき、熱だけが肉に染みて来ると、何故だか、の痛みが恋しくなる。 もっと耐えたいと咲織の何処かが思ってしまう。 それは・・・。』

  いつしか、真っ白だった丸い尻たぼは朱に染まっていた。 その下で剥き出しの秘唇はその色を濃くし、一人透明な蜜に塗れようとしていた。
 
 は続いた。 咲織の悲鳴から張りが消え、切れ切れの啼き声になっても、三宅はを振るい続けた。 

 やがて、その啼き声さえ嗚咽に変わり、一鞭毎に咲織は咽び、咳き込んだ。 咲織の尻たぼにぷつぷつと真っ赤な血玉がそばかすの様に浮かんでいた。 折れそうに細い腰はくねる力さえ失い、一鞭毎にかくかくと揺れた。 鞭が止んだ。 

「良かったよ。 本当におまえの喉は、最高だった。 おまえの苦痛に歪んだ顔も愉しませてくれた。 早く、汚れた床をその口と舌で清めなさい。 それが零した罰だ。」
 三宅は咲織の頭を踏みつけた。 で再び濡れた頬が床に摺り付けられた。

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☆ その59=化粧。

「はい。」
 三宅の足が頭から退けられると、咲織は素直に答えた。 まだの痛みに胸は引き攣っていた。 それでも咲織は抗いのそぶりも見せず、ただ良かったと言った三宅の暖かな声その胸で反芻しながら、床を汚している三宅の精と自分の唾液の残骸を、咲織はペロペロと小さな舌を出して舐め取っていった。 

 舐め取る度に、苦さと惨めさを飲み込んだ。 飲み下す度に、逆流した胃液で灼け、さらに三宅の肉棒で傷つけられた喉の粘膜がひりついて、呻いた。

『でも、こぼしたのは私。 そして、こぼれたのはご主人様の精。 次はちゃんと飲めんでみせます。 きっと。』

「何時まで掛かって舐めて居る。 そんなに床が美味しいのか。 おまえは俺の精液で満腹かも知れないが、俺は腹が減ってきた。 出かけるぞ。 その汚れた顔を綺麗に直してきなさい。」
 三宅は咲織を見ても居なかった。 ソファに一人寛ぎ、紫煙をくゆらせていた。 
 
 鏡に映った顔は酷いものだった。 精液と唾液と鼻水と涙で化粧は崩れ、それらが乾いて張り付いていた。 また、瞳から涙が溢れた。

『こんな顔じゃ嫌われちゃう。 出掛けると、ご主人様は。 あぁ、嬉しい。 それなら、尚のこと、綺麗にしないと。 少しでも綺麗に。 ご主人様が恥を掻かない様に。』

 冷たい水が火照った頬に心地好かった。 泣いている暇は無かった。 咲織は急いで化粧を直した。 哀しみを飲み下した胸を一緒の外出と言う歓びが今は満たしていた。

「化粧は終わったか。」
「はいっ。」
「こっちにおいで。 おまえに良いものを遣ろう。 おまえに身につけさせて、外を歩きたかったんだ。」

『うそ。 何だろう。 私にわざわざ何を呉れるんだろう』
 不安と期待を抱いて、三宅の元へ急いだ。 三宅の前で一瞬立ち止まったが、そうするのが奴麗として当然だと思い直して、咲織は、三宅の足元で犬這になった。

「ここへ来なさい。」
 三宅はソファの隣を示した。
「脚を伸ばして。 こっちへ。」
 と言って、咲織の小さな足を自分の膝の上に置いた。

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☆ その60=ガラスの手首。

 三宅は丁寧に咲織の脚からストッキングを抜き取っていった。 ついで咲織を抱き締めるようにして、細い腰を飾っていたガーターベルトも外し、文字通り一糸も纏わぬ素っ裸にした。  咲織は何も言えず、ただ身を任せるしかなかった。 柔肌に三宅の掌が触れ、指がなぞる度に躯の中を細い電気が走った。 細いが抗い難い強い官能の電気だった。 

 細く小さな肩だった。 軽々と掌の中に収まった。 少しでも力を加えれば、ワイングラスよりも容易く粉々に砕けそうだった。 三宅は自分の掌の中の咲織の肩をそして、細い鎖骨を愛おしそうに見詰めた。 

 ぐいと引き寄せると、強く抱き締めた。

「可愛い奴。 俺の奴麗。」 
 三宅は独り言のように呟いた。

『はい。 咲織はご主人様の奴麗です。 可愛い奴麗になりたいです。 本当に。』

「手を出しなさい。」
「もっと、側に寄って。 手を出しなさい。」
 三宅は咲織の手首を掴んだ。

「細いな。 折れそうだ。 掌もこんなに小さかったのか。 幼子みたいだ。こんな掌で俺を愛撫していたのか。」

『はい。 ご主人様を愛撫するのは愉しいです。 とても。』

 三宅はその手頚に、革製の腕輪を巻いた。 手頚の内側で、金属製の留め具を填めた。
 カチッと乾いた音が咲織の胸に響いた。

 それは幅数センチ程の黒いしなやかな皮で出来ていて、かなりの厚みがあった。 手頚の両側に金色の太い鉄輪が頑丈に取り付けられている。 一目で女性の腕を飾るブレスレットやバングルなどではなく、奴隷を繋ぎ止めるための手枷だと判るものだった。 細い咲織の手頚にぴったりと合っていて、廻すゆとりも無かった。

「おまえのサイズに合わせて、誂えたんだ。 店の者がサイズを聞いて驚いていた。 腕も頸も脚も大人の女にしては細すぎて、子供でも誘拐したんじゃないかと誤解されそうだった。」
 三宅は、愉快そうだった。

「ありがとうございます。 ホントに嬉しいです。」      
咲織は両手に填められた腕枷をうっとりと眺めた。

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☆ その61=首に嵌められた証し。

『わざわざ私のために、誂えてくれたんだ。 ほんとサイズもぴったり。 この前、私が眠っている内に計ってくださったの?』

「留め金の横に小さな穴が開いているだろう。それは鍵穴だ。 このキーが無いと外せない。 鉄輪を二つ付けさせた。 縄や鎖のフックを使えば簡単におまえの自由が奪える。ホントに手枷がよく似合う腕だ。 奴隷に相応しい。」
 黒く厚い皮の手枷は、咲織の白く細い手首をサラに引き立たせ、見る者を嗜虐的に惹きつける魔力さえ放っていた。

 さらに、三宅は咲織をテーブルの上に立たせた。 立つと、咲織の丁度秘唇が三宅の眼の高さになった。 咲織は恥ずかしさと嬉しさに眩みそうだった。 ガラスのテーブルの上で咲織の小さな足の桜貝の爪がわなないた。 

 三宅は咲織の両足首にも手首と同じ作りの足枷を填めていった。 足首さえ三宅の片手が軽く掴みきれる細さだった。 付け終わる時、三宅の手は軽く震えた。

「降りて。 床に跪きなさい。」
「上を向いて、頸を伸ばすんだ。」
 咲織が従順に少し顔を上向けて頸をさしだそうとした時、三宅が手にしたそれが見えた。

「あの、見せて頂けますか。」
「いいだろう。 ほら。」
 咲織の手に乗せられたのは、手枷と同じ皮で作られた首輪だった。 良く鞣した皮で出来ているため、分厚いのに内側はとてもしなやかなで、ビロードのような優しい肌触りだった。 づっしりとした重みのある金色の輪が前後についていた。 よく見ると内側に『Miyake`s Slave』とエングレーブしてあった。 
 
 それを見つけて咲織は思わず声を上げた。
ご主人様のお名前が。 うれしいです。」
 手にした首輪をまるで指輪を貰った恋する少女のように飽きず眺め、宝物の様に撫でた。
 
「さっ、付けてやる。 頸を出して。」
 三宅は咲織から首輪を取り上げ、差し出された咲織の頸に巻き、後ろの留め金を填めた。
カチリと言う機械的な音が響いた。 小さな音だったが、その音が咲織に逃れる事の出来ない囚われ人になった事を知らせた。 胸がきゅんとした。 子宮から甘い蜜が滴った。

 咲織の華奢な頸に填められると、首輪は豪華なチョーカーに、黒い革に嵌められた金色の鉄輪はペンダントの様にさえ見えた。

 三宅はソファに座り直し、この時をゆっくり愉しもうとタバコに火を付けた。

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☆ その62=公衆の面前で。

「廻ってご覧。 ゆっくりと。」

 咲織の自由を奪う為に、要所に取り付けられた黒い枷と金色の輪は、抜けるように白く艶めいた咲織の肌を引き立たせ、咲織に最高の娼婦だけが持つ婬靡な艶を与えていた。  三宅は自分の美しくも哀れでそのために婬らに輝いた所有物を満足気に眺めた。

 まるでアングルの描いた『囚われのアンドロメダ』さながらに見る者を虜にし、血を婬らに滾らせずには置かない風情を咲織の裸身は持っていた。

「私も見て良いですか。」

 咲織は、クローゼットの大きな鏡に自分の姿を映した。 三宅が誂えてくれた自分を拘束するための責め具を一つ一つ見詰めた。 何故か、どんな宝石を貰ったよりも心が華やいだ。

ご主人様が私にわざわざ誂えてくださった。 私を繋ぐために、この首輪が私をご主人様に繋いでくれるんだ。 奴麗。 咲織はご主人様の奴麗です。』

 ぴったりと填った首輪は、大きく息をすると咲織を少し苦しめて、その存在を主張してくる。 その軽い息苦しさが三宅に抱き締められた時を思い起こさせた。 咲織は態と深々と息をした。 
 
ホテルの外には、夜の冷気が降りていた。咲織は、久しぶりに檻の外に出た様に、新鮮な気持ちで空気を吸った。三宅が肩を抱いてくれた。

『まるで恋人同士みたい。 ご主人様の掌、あったかい。』

 咲織は、地下鉄の中で三宅に躯を密着させていた。時々、腕輪を撫でて感触を確かめた。鉄輪を弾くとちりりと音を立てた。

 銀座で地下鉄を降りた。 数寄屋橋の交差点で立ち止まると、三宅は耳元に囁きかけた。「おまえの首輪に紐を付けて、犬を引っ張るように歩きたいんだけど……」
 それは、命令ではなかった。初めて耳にする三宅の頼みだった。

『こんな街中で、そんなことしたら、思いっきり目立ってしまう。 私は佳いけど、ご主人様まで変態だと思われてしまう。 ご主人様まで好奇の眼に曝されてしまう。ほんとにそうする積もりなら、勝手に首輪の金具に紐を掛ければ済むのに。 どうして私に訊くの。どう応えたらいいの』
 咲織は、三宅を見詰めた儘、立ち竦んだ。
「嫌か。街中で辱められるのは、公衆の面前で変態面を曝すのは。」

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☆ その63=リードを引かれて。

「いいえ、私は佳いんです。でも、ご主人様も恥を掻かれます。こんな変態奴麗を連れて歩いたら……。それにこんな会社の近くでは、誰が見ているか判りません。」
「みんな見るだろうな。 みんな顔を顰めて、蔑むだろう。 でも、決して言葉には出さないが、心の中では、羨ましく思うんだ。 そんなにも強く繋がっている我々のことを。紐で繋がっているだけじゃないって、判るから。」

「付けてください。犬と散歩するように紐を持って。ご主人様が良ければ……。」
 咲織は頸を突き出した。カチャリと本当に犬用のリードロープが付けられた。三宅は、左手にロープの握り持ち、右手で咲織の肩を抱いて歩き出した。

 白っぽい薄着では、頸から伸びる黒いロープを隠す事は出来なかったし、二人を好奇の視線から隠すには街の灯りが明る過ぎた。 咲織が三宅をおずおずと見る。 三宅は胸を張り、堂々と誇らし気に歩いている様に見えた。 咲織は胸が熱くなるのを感じた。

『私を隠すことなく、見せ開かす様に連れて歩いてくれる。 ほんとに私はご主人様の奴麗になったんだ。 隠す事じゃないんだ。』

 咲織は、時折突き刺さる視線の中を三宅に寄り添って歩いた。 心の有りよう一つで、羞ずかしさが誇らしさにさえ変わることを知った。

『みんな見て。 私はこの人の奴麗なんです。』 

 永遠とも思えた二人の道行きはあっけなく終わった。 四丁目の角を曲がって、絨毯の敷かれた階段を降りていった。

 ドアを開けるメートルドの顔に驚愕の表情が一瞬浮かんだ。

「これは、こうして犬の様に扱われ無いと外に出られない変態なんだ。 許して欲しい。」
 三宅は態と咲織を貶めるように謂った。

咲織は、メートルドの侮辱の言葉を畏れた。 が、彼は直ぐにプロの表情に戻り、咲織など居ないかの様に三宅に微笑み掛けた。 すーっと店内を進み、薄暗い隅の席へと導いていく。 歩を進める度に、他のテーブルからの微かな騒めきが二人の後を追った。 咲織は、三宅の腰に抱きついて歩いた。

「恥ずかしかったか。」
「いいえ。 ご主人様と一緒だから、ちっとも」
「そうか。 恥知らずな女だな。 そう言う恥知らずのおまえなら、四つん這いで犬の様に飯を喰うんじゃないのか。」 
三宅は、愉しそうに笑った。

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☆ その64=首輪

 咲織は、三宅がリードを強く持っていなかったら本当に四つん這いになりそうだった。 

「馬鹿っ、本気にするな。 店から摘み出されるだろ。 それに気に入ったからって何時までリードを付けて居るんだ。」
 三宅にリードロープを引っ張られて、咲織は甘えるように頸を差し出した。 不意に口付けをされた。 躯から力が抜けてしまいそうだった。

メートルドが一つ空咳をして、二人を席に着席を促した。
急に現実に戻った咲織は、頬を真っ赤に染めた。

「黙ってないで、何か謂いなさい。」
「好きです。 ご主人様のこと。 心の底から。」

「口を開けばそんなことか。 他に謂うことは無いのか。」
「いえ……。 その他に考えたことなくて。 どんどん、ご主人様の事が好きで堪らなく為って居るんです。」

「こんな風に扱われても?」
 三宅は咲織の手首を手枷の上から握った。
「はい。嬉しいです。 嬉しくて、舞い上がりそうです。 わざわざ誂えて戴いて。 高いんじゃないですか、私には判らないけど。」

「変な事を考えるんだな。 確かに安くはないが。 ヴィトンが買えるくらいかな。」
「そんなに。 申し訳ありません。 私なんかの為に。」

「そう、おまえを縛り付けるために。 俺が玩べ無い時でも、おまえが奴麗であることを忘れない様に。 だから、少しも高いとは思わない。」
「はい。いつも填めて居ます。ご主人様と一緒にいられるみたいで、これで夜も寂しく無く為りそうです」
 咲織は、慈しむように首輪を撫で擦った。

「それは、ネックレスじゃない。 まだ、使っていないが、おまえに苦痛と屈辱を与える責め具なんだ。 喜んだことを後悔するかも知れないぞ。」
「後悔なら、疾っくにしています。奴麗になるとメールした時から。」
 咲織は三宅の前で初めて心から笑った。
 
 三宅が頼んだキールロワイヤルが運ばれて来た。カクテル照明に照らされて、小さな金の海に天使の気泡が生まれては、煌煌と輝きながら空に吸い込まれて行く。

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